金融資産(預金・株式・債券・保険)の名義変更

①銀行預金・有価証券の相続手続きはリスキー

相続手続きの中で、一番、これが大変かもしれません。むしろ、土地・建物の名義変更より厄介かと。

法律上は相続割合が決まっているのですが、実務まで縛りをかけていないのが実情。

なぜなら、

① 銀行預金は相続人代表者の口座に一括で送金、後のことは相続人どうしに任せきり。

② 有価証券も同様。代表相続人の口座に一括して移管され、後は相続人どうしに任せきり。

参考: https://faq-agency.smtb.jp/faq/show/2495?site_domain=personal

他相続人の同意書添付(しかも印鑑証明書付き)となっているものの、入れ知恵でもされて欲を出されたら、と思うと、はっきりいって、トラブルの種満載ですね。

トラブルを未然に防ぐには、あらかじめ「遺産分割協議書」を作るか、作らない場合は「法定相続以外はまかりならん」という姿勢をはっきりさせる必要があると思います。

そういった意味では、専門家を頼るのも一つの最適解かもしれません。

ただし、トラブルになってしまったらその後は弁護士しか対応できないので、トラブルになる前に手を打つ必要はあるかと思います。

②保険証券は有価証券とは別物

ここで注意しなければならないのは、生命保険の場合。生命保険は被相続人が保管会社と契約する際に、「受取人」を指定し、死亡時に受取人がある金額を受け取る旨の「契約」にすぎません。(ただし、「特段の事情」による例外あり)

参考:https://www.ht-tax.or.jp/sozoku-guide/lifeinsurancemoney-speciabenefit

したがって、「特段の事情」がない限り、相続財産ではなく、受取人にも「特別受益」は発生しません。

また、保険証券と有価証券は全くの別物です。

「なんでAだけに多額の遺産が入っているのか」という事例を耳にしますが、実はこれが保険金の受取だったりするのです。

なお、お亡くなりになられた方が保険の「契約者」の場合は、「契約者の変更」の手続きになります。

③ 手続きの前に書類を用意するのが面倒

これは不動産(土地・建物)の相続もしかりですが、被相続人(お亡くなりになられた方)の生まれてからお亡くなりになるまでの戸籍謄本(現在の戸籍謄本だけではなく、コンピューター化される前の古い戸籍謄本「改製原戸籍」も必要)を取り寄せなければなりません。また、相続人全員(お亡くなりになられた方が親御さんでしたら、未亡人およびごきょうだい全員)の戸籍謄抄本や印鑑証明も書必要になります。

はっきり言って手間以外の何物でもありません。特に遠くに離れている場合で、郵送で取り寄せるのも平日に郵便局に足を運んで定額為替を購入しなければなりません。

ごきょうだいにもご協力を仰がなけばなりません。手続きの複雑さから身構えられることも考えられます

また、手続きをスムーズに進めるためには、複数の銀行・証券会社の手続きを同時並行で進めることになります。

いずれも、原本の提示(還付あり)を求められるので、戸籍謄本等の必要書類を複数用意する必要があります。

手数料もかかりますので、複数取得すれば、コストも大きくなります。特に、改製原戸籍(コンピューター化される前の戸籍)は1通750円もしますので、複数取得すれば、大きな出費になります

このように、銀行や有価証券の相続は不動産(土地・建物)の相続以上に面倒なケースが多いです。しかも、各銀行、証券会社ごとに扱いが異なりますので、それが事態をさらに複雑にします。ここは、行政書士等の専門家による死後事務委任やそれに伴う職務請求が最適解になるかも知れません。

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