※代表が2025年5月19日にNoteに掲載したものを再掲・編集しています。
【注意】この記事は道路管理瑕疵対応の中で、社会的な影響が大きくないものについて述べています。社会的な影響が大きい案件については、被害に遭われた方の感情に配慮し、あえて触れないようにします。改めて被害にあわれた方には心からお見舞い申し上げるとともに、一日も早い回復をお祈り申し上げます。
① はじめに
道路を走ったら穴ぼこにはまってパンクした。
雪道を走ったら標識から雪が落ちてフロントガラスが割れた。
そういった経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
この場合、交通事故としての処理は第一当事者が道路管理者(国、地方公共団体、有料道路管理者)第二当事者が運転者として処理されるケースが多いのですが、ケースによっては運転者の単独事故として処理されるケースもあります。
ただし、これには根拠となる法律が異なります。
一般の交通事故においては、民法第709条(不法行為による損害賠償)が適用されるわけですが、道路管理の不備(道路のひび割れ、穴ぼこ、標識からの落雪、トンネルや橋梁からのコンクリート落下等 ※業界内では「管理瑕疵」と呼ばれる)による事故については、国家賠償法が適用されます。
なぜ、このように特別扱いされるかというと、公共物を対象とした法律(公法)と民間人どうしのかかわりを扱う法律(私法)は異なるものとして処理されること(公法私法二元論)に加え、私法の一般法である民法に比べ、公法の特別法である国家賠償法が優位に立つ、という論法により、特別法が一般法に優先するという法理に基づくものです。
ただし、国家賠償法は条文により、以下の規定が置かれています。
第二条 道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。
② 前項の場合において、他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは、国又は公共団体は、これに対して求償権を有する。
第三条 前二条の規定によつて国又は公共団体が損害を賠償する責に任ずる場合において、公務員の選任若しくは監督又は公の営造物の設置若しくは管理に当る者と公務員の俸給、給与その他の費用又は公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者とが異なるときは、費用を負担する者もまた、その損害を賠償する責に任ずる。
② 前項の場合において、損害を賠償した者は、内部関係でその損害を賠償する責任ある者に対して求償権を有する。
第四条 国又は公共団体の損害賠償の責任については、前三条の規定によるの外、民法の規定による。
第五条 国又は公共団体の損害賠償の責任について民法以外の他の法律に別段の定があるときは、その定めるところによる。
よって、道路瑕疵対応については、一般の交通事故と同様の処理がなされ、最終的には示談書が締結され、それに基づいて支払いが行われる方式となっています。
※道路法第58条等に基づいて行われる道路構造物への損傷復旧対応(原因者負担金)については、別に述べさせていただきます。
② 難易度
相手方は、当然怒っていらっしゃるわけですから、はっきりいって楽な仕事ではありません(当たり前ですが)。
感覚的に、次のカテゴリによって、難易度の度合いが変わってくると思います。
難易度高⇒人身事故(負傷者が出た場合)、当事者多数
難易度中⇒物損の中で過失相殺を伴うもの
難易度小⇒単独(または当事者が少数)の物損かつ過失割合100%
(道路管理者が全額負担)
難易度が小さい場合も、相手が高級輸入車や、レアもののバイクの場合、部品調達の困難に加え、本人の思い入れと査定価格のギャップが大きく(特に車歴が古い車で)、裁判外の交渉がこじれて訴訟に発展した事例が数多くあります。
③ 実際に交渉してどうだったのか
まず、事故と道路の管理不備の因果関係を判断する必要があります。具体的には、
①車の傷と管理不備の箇所が一致し、科学的に証明できるか
②運転者に過失はなかったか。例えば、速度を出しすぎてなければ避けられたのではないか、当日の天候や道路の見通しは 等
それに加え、道路管理者にも判断材料があります。
①今回の道路損傷は予測できたのではないのか(予見可能性)
②対策を行っていれば事故を未然に防ぐことができたのではないのか(結果回避可能性)
この要件をそろえて、初めて補償する、しないの判断がなされ、合わせて運転者側の過失を加味し、過失相殺の比率が決定されます。
まず、因果関係が認められずに補償しない、と判断した場合の交渉のストレスは補償を前提としたものに比べてストレスが大きいものです。
当然、相手は払ってくれることを期待しているので、期待が外れた時の怒りは相当のものと心得ております。実際に裁判になったこともございました。
意外と思うかも知れませんが、私がNEXCOにいた当時は、道路賠償責任保険に加入していないため、交渉を社員自らが行い、管理瑕疵としての判断はもとより、損害賠償額の判定から示談書の締結に至るまで社員自らが行っていました。
道路管理者の過失100%といっても、楽なものではありませんでした。
相手方にとってみれば、道路管理者がぜんぶわるいのだからタダでオーバーホールしてもらうのは当然だ、と意気込む方もいらっしゃるかも知れません。
こちらは保険会社のように専門のアジャスターがいるわけではないので、査定には非常に苦労しているのが現状ですが、査定を公正にするために自分で勉強し、「レッドブック」や「イエローブック」、「赤い本」や「青い本」などの専門書、中古車の査定情報、パーツについての文献を読み込みながら査定を行っています。
したがって、相手方の望む価格と査定価格が一致しなければ、交渉は成立しないわけで、最後まで折り合いがつかなければ訴訟にいたる、ということになります。
実際に交渉にあたるのは、管理事務所(「高速道路事務所」、「保全・サービスセンター」とも呼ばれる)の管理担当課長が担うことになります。
普段は道路占用などの許認可、不動産の賃貸借契約、使用貸借契約、用地の取得および管理(土地売買契約を含む)、周辺業務(警察・消防・隣接インフラ・レッカー会社 等)との協議調整(技術的な面も含めて)、道路損傷債権の管理および回収といった法務に当たるわけですが、そこに管理瑕疵交渉が加わることになります。
以外かもしれませんが、管理担当課長のBtoCの業務は上記に挙げた管理瑕疵交渉と道路損傷債権のうち、保険会社が入っていない案件、そして用地の売買交渉のみです。ほかはBtoBです。
(道路損傷債権の話については、別で述べたいと考えています)
構成比としては一見、小さいように見えるのですが、いったん発生すると会社の信用に直結するリスクとなるので、全力で集中しなければならず、精神的な負担が大きくのしかかります。
相手方が遠方の場合、何往復にもわたる移動で業務時間を費やし、体力的な疲労の中で、他の業務を身体に鞭打って行わなければならないこともあります。
おかげで交渉から示談に至るスキームを学ぶことができましたし、今後の行政書士としての予防法務に生かすことができるかな、と思っています。
すでに合意済みのもの、口約束したけど書面に残したい、とお思いの方、行政書士で対応できますので、お気軽にお問い合わせください。
※ただし、裁判中の案件、交渉中の案件については、行政書士では対応できません。弁護士の独占業務になりますので、何卒ご理解のほどお願いいたします。

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