あおり運転と寛容性
最近、この記事を目にして、目から鱗が落ちた。
要約すれば、インドはルールが無きに等しいから、ルールを守れないストレスに耐える国であるのに対し、日本はルールに厳格である為、ルールに縛られるストレスに耐える国であるから、移民に寛容であるより、難民を出さないような協力が必要である、と説いている。
ここ最近、話題になっている煽り運転の一番大きなきっかけは、右側の車線を前の車がゆっくり通行し、左側車線の車両に追い越されて、理不尽を感じ、それに怒りを感じた運転者が暴挙に出たパターンが多いのかな、という気がする。
道路交通法第20条を紐解くと、
(車両通行帯)第二十条 車両は、車両通行帯の設けられた道路においては、道路の左側端から数えて一番目の車両通行帯を通行しなければならない。ただし、自動車(小型特殊自動車及び道路標識等によつて指定された自動車を除く。)は、当該道路の左側部分(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路)に三以上の車両通行帯が設けられているときは、政令で定めるところにより、その速度に応じ、その最も右側の車両通行帯以外の車両通行帯を通行することができる。2 車両は、車両通行帯の設けられた道路において、道路標識等により前項に規定する通行の区分と異なる通行の区分が指定されているときは、当該通行の区分に従い、当該車両通行帯を通行しなければならない。3 車両は、追越しをするとき、第二十五条第一項若しくは第二項、第三十四条第一項から第五項まで若しくは第三十五条の二の規定により道路の左側端、中央若しくは右側端に寄るとき、第三十五条第一項の規定に従い通行するとき、第二十六条の二第三項の規定によりその通行している車両通行帯をそのまま通行するとき、第四十条第二項の規定により一時進路を譲るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、前二項の規定によらないことができる。この場合において、追越しをするときは、その通行している車両通行帯の直近の右側の車両通行帯を通行しなければならない。
とされている。
つまり、高速道路だろうが、一般道路だろうが片側2車線以上においては、追い越しする場合や右折する時以外は、右側車線を走行してはいけない、ということである。なお、道路交通法第27条においては、
(他の車両に追いつかれた車両の義務)第二十七条 車両(道路運送法第九条第一項に規定する一般乗合旅客自動車運送事業者による同法第五条第一項第三号に規定する路線定期運行又は同法第三条第二号に掲げる特定旅客自動車運送事業の用に供する自動車(以下「乗合自動車」という。)及びトロリーバスを除く。)は、第二十二条第一項の規定に基づく政令で定める最高速度(以下この条において「最高速度」という。)が高い車両に追いつかれたときは、その追いついた車両が当該車両の追越しを終わるまで速度を増してはならない。最高速度が同じであるか又は低い車両に追いつかれ、かつ、その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするときも、同様とする。2 車両(乗合自動車及びトロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、最高速度が高い車両に追いつかれ、かつ、道路の中央(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路の右側端。以下この項において同じ。)との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合においては、第十八条第一項の規定にかかわらず、できる限り道路の左側端に寄つてこれに進路を譲らなければならない。最高速度が同じであるか又は低い車両に追いつかれ、かつ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合において、その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするときも、同様とする。
とあるように、追いつかれたら左側に避けなければならない旨記載されている。
にもかかわらず、ここ最近は右側車線を制限速度マイナス10km以上でゆっくり走り、左側車線がそれを追い越そうがそれに寛容になりつつのではないのか、という気がしてならない。
何も、右側車線をハイスピードで走行せよ、と言っているのではない。ただ、車線全体で走行速度が低下すると、都市部においては、慢性的な渋滞を引き起こす恐れがあるので、それを私が危惧しているのも事実である。
そんな中、上記の「インドの寛容性」を見て、改めて目から鱗から落ちた。
私はインドには行ったことがないが、インドの交通渋滞や動物が混雑した道の真ん中を堂々と走るぐらいの無秩序な交通の流れはよくtvや映画で目にするし、リシュケシュに行った知人の話からもよく聞く。
一昔前であれば、速度の遅い車は右側車線を走行してはならないと、法律上どころか、一般常識でまかり通り、それが厳格に守られていたと思ったが、最近はその常識が覆されてきているのではないかと思っている。(もちろん、道路交通法違反にあたるもので、許されるものではないことは重々承知してはいるが。。)
2003年にトラックのリミッター装着義務を契機にして、道路交通法の改正により、危険運転の厳罰化が行われてきたこと、そして景気低迷を受けて燃料の無駄遣いをなくそうという動きから、「少しでも早く行けるのだから右側車線をずっとゆっくり行けばいいじゃないか」という意識が醸成されたのと、海外旅行や駐在、留学などで海外に出て帰ってきた日本人が、海外から価値観を持ち帰り、ルールに厳格になる必要はない、渋滞になろうがマイペースで行けばいいじゃない(インドという前例があるじゃないか)、という意識が醸成されてきたように思える。
まさしく、あおり運転を行う運転者は「ルールは厳格に守るべきものであり、それを逸脱するものは許されない」、とする価値観から脱却できていないことの表れかもしれない。(かといって、さっさと道を譲らないと道路交通法に抵触するのも事実だが。。。)
そんな動きなのか、旧来の価値観は崩れ、自由を求めて自ら動き出す傾向、そしてそれを認容する傾向、特にインターネットやSNSの発達がそれを推進し、生きやすいが自己責任の社会ができつつあるのではないかと思う。
今後、規制や許認可や政府が定めたルールをネタに仕事を行うにあたり、価値観の変化に応じる形でルールの改変や廃止が相次いで行くであろうし、現にそれが加速しつつあるように思える。
生きやすくするためにルールを変えるのは歓迎するが、その分、それに伴い発生するニーズや諸問題に応えられるよう自己研鑽していきたいと思う。
※ あえて言っておきますが、何も法律を破れ、と申してはおりません。法改正が行われるまでは、そのルールに従うべきであると、私は思っています。